春は竹の子、秋は茸と季節限定の偏食の度合いを、私は年を追うごとに深めているようだ。
もう随分昔の話、6月の終わりに、月山にスキーに出かけた。この季節になり、何と、月山はスキーのシーズンが始まったばかり。まだ小さかった娘を前に抱き、姥沢の斜面を何度も滑り、宿に帰っては山菜汁で腹いっぱいにする数日を過ごした。 さらに帰りに寄った、山菜専門の料理屋で出されたのが、まさに旬の月山筍。すっかりその味の虜に、特に味噌汁と竹の子ご飯、普段あまり食べない娘が、お変わりする始末。 一般には、ねまがり竹とか、細竹と云われているイネ科の竹の子だ。それ以後、このみじかい季節限定を待ちわびて、おおやけには喋れないが、ある雪の深い山の、竹やぶに入り込み、出たばかりのねまがり竹を、手に何本も持ち、皮をむきその場で生のままぼりぼり、次から次とむさぼる、浅ましい姿をさらすはめに。お腹をこわしても良いから、本望だからと座り込んでいる、自分に笑いがこみあげてくる。 熊と間違えられるのでは、内心ひやひやしても、その味覚には抗えない。 今年も注文しておいた月山筍が届き、丸ごと焼いて皮をはぎ、口にする。焼いたトウモロコシ、硬い白アスパラガス、どれとも違うアクのえぐみや甘みさ、でもまだ満足出来ず食べ足りない、。また秘密の竹やぶから誘惑の手招きがくる。 会津十念味噌、蕗味噌、胡桃味噌、そして塩をつければ、私の中の月山筍病いはどんどん進行してしまう。それにしても、この時季はあまりに短い。
by cantare-so
| 2005-05-30 11:35
| 和食
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