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秋、心のふるさとを歌う

 安東・君子村でのコンサートの下見は、緑爽やかな五月の風の中。続いて七月のソウルは真夏の日盛りと激しい雨の中。そして十月のコンサート・ツアーは黄金色の稲穂と紅葉し始めた秋風の中。f0133771_2132785.jpg

 今年は三度にわたって、朝鮮半島を旅する機会に恵まれた。これらはすべて張先生ご夫妻を中心にソウルの王教授、そしてさらに多くの方々から頂いた、心からの思いやりから成立していた事を強く感じる。
 
 春から初夏の山菜とマッコリで舌鼓を打ちで始まり、韓国の歴史と文化を少しなりとも紐解き、書物だけは部屋に山積みとはなったが、その俄か仕立てではとても追いつかないことに、やっと気がついてからの秋の旅立ちを迎えてしまった。
 これもまた、いつもの私のつたない能力と思えば気は楽とばかり、総勢24名で成田を飛び立ち、釜山に旅の第一歩を記した。
 これからの時間は、出会う瞬間ごとに反応し、記憶と少しばかりの知識が頼りなく頭の中にちらつくだけだ。
 
 定番の昼間の観光後、夕食はチャガルチ市場で海鮮鍋を堪能。とくに貝類が好物の私は、大きなたいらぎと身のしまったとこぶしに箸がとまらない。
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翌日は、新羅の古都慶州へ。秋晴れに稲穂はまさに黄金色に揺れ、所々に木々の葉も色を変えはじめている。
円墳の連なる古墳公園は人数も少なく、花梨の木の実もたわわになり、松林のなかの歩みも心地よい。
 今年は不作で、期待の松茸釜飯には気落ちをしたが、午後は石窟庵の山道も無事に辿り着き、晴天に日本海の水平線も眺めることが出来た。


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仏国寺はさらに人影もまばらで、寺本来の静けさに包まれている。
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ご高齢の方、病も抑えての方、またこの旅のためリハビリをされた方、担うものは皆さんそれぞれお有りだが、こうしてご一緒に旅が出来たことに、私も妻も胸がいっぱいになる。
 多くの方々の思いに支えられている事に、この旅の時間の大切さ重さがますます尊いものに感じられる。
 慶州の宿は温泉が引かれていて、肌がすべすべの美人の湯だと妻が喜んでいたが、旅の疲れを癒す湯であれば、私も参加者にとつてもまことにありがたい次第だ。

 さて、少し雲の行き来が気になるが、二時間半余りで安東に到着。昼食はこの地方独特の祭祀料理。
河回村に行く参加者と別れ、私と妻、そしてガイドと山本女史でコンサート準備のため、君子村にタクシーで向かう。今年五月以来だが、何だか懐かしく、出迎えた金館長と握手を交わした。
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 この日にあたっては、張先生を始め王教授の手配があってこそ実現した、小さいながらもかけがいのないコンサートだ。いくつかの問題もあったが、兎にも角にもこの日を迎えたことに、私達は幸せと喜びの気持ちに満ちていた。f0133771_21351274.jpg
 戸外でのコンサートでは、天気が一番心配だったが、これも何とか大丈夫そうだ。
 さて日本では仲秋の名月が三日前だったが、この両班の村でも旧の歳時が同じようにあり、特製月見団子も後で特別に頂くことができた。コンサート後の食事に饗されためずらしい料理の数々は、すべて王教授からお手配していただいたもので、恐縮の極みだ。 
 
 コンサート中、時おり立ち上がる秋風の寒さに、妻の薄物のドレスが心配だったが、持参したショールを巻き、私もドミンゲスのマフラーを巻いた。
しかし、それより何より寒さに耐えてお聴き下さった皆さんには感謝の言葉もありません。
 ゲスト出演のキム・ケランさんによる、伽耶琴併唱はパンソリの愛の歌。有名な「春香伝」の中から選んでの演奏。アンコールにはアリランで応えて下さった。

 後半は、韓国語で張先生に特訓を受けた「カゴパ」。妻の「サムソンとダリラ」、私の「星も光りぬ」、そしてこのところ定番の「コン・テ・パルティーロ」。
「秋、こころのふるさとを歌う」の締めくくりは、日本の歌「ふるさと」を全員で歌い上げた。
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時も過ぎ月も中天にかかって、コンサート終了後の打ち上げは韓式の食事。珍しくもまた、幼い頃に味わったような、不思議な記憶を呼覚ます品々。さらに特別用意して下さったお餅の数々。
 私はマッコリを片手にトラジ(ききょうの根)のキムチに箸が伸びる。
 
 君子村に宿泊する方、安東市内に宿泊する方、分かれてとひとまずお開き。翌朝には楽しいエピソードがそれぞれから聞かされ、この夜は忘れられない思い出になったことは確かのようだ。

 君子村の夜も更けて、オンドルの温もりとマッコリの酔いに通訳を介してだが話は盛り上がり、君子村の宗主も突然正装で登場。私と妻も歌い、宗主も韓国の「荒城の月」「アリラン」と美声を聞かせていただいた。
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 ああ、楽しかった。ほんとうに楽しかった。
 明日はソウルへ向かい新しい出会いに感動するのだろうけれど、人は楽しく過ぎていく時間と最高に感じる幸福感に、過去形をつけなければいけないとは、何と悲しいことだ。
 
 
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by cantare-so | 2009-10-10 18:04