パリのビーフ・ステーキ

30年近くも前の冬になるが、初めて憧れのパリに夫婦で行き、慣れないフランス語で行き先を告げ、すっかり日の暮れたリュクサンブール公園の角で、タクシーを降りた。限られた時間で、カルチェラタンで食事をし、地下鉄でサンジェルマン・デプレ教会のアポリネールの石像を見れば、私は充分に満足だった。

さて街角の小さなレストランでメニューを開いたまでは上出来。

しかし、肝心の品書きが可愛らしく装飾した花文字で判読不能。めずらしく不安げな妻の手前、しっかり注文しなくては、と思いつつ安直に定食を頼み、勧められるままビーフ・ステーキ。出て来た肉の何と硬いこと!
ああそうだった、フランスの牛肉は確か硬いと聞いていた・・・。これは美味しいか不味いかとは違う、思い出に残るステーキになった事は間違いない。

それ以来、何度も訪れたパリでは、肉料理好きの私達夫婦にとって、ビーフステーキは特別思い入れの深い一品になっている。
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# by cantare-so | 2005-02-16 11:41 | フレンチ

ルーヴェンスとヴァン・ダイク

立派で、雰囲気があり、ヨーロッパ汽車旅行の、いかにも旅情を誘うアントウエルペンの駅舎を背にして、私の心は二つの期待で躍った。

一つはルーヴェンスの絵を見ること、もう一つは美味しい食事で、その絵の余韻に浸ること。
駅から真直ぐ、大通りの歩行者をすり抜けて左に曲がると、アトリエに着いた。何度も頭の中でシュミレーションしていたので、迷うことなしだ。

さて次はいよいよノートルダム大聖堂に。しっかり拝観料を取られたが、二枚の絵の前で放心状態。どっちが十字架降下で、昇架なのか混乱・・・・

さてその後は、旧市街の路地を彷徨って辿りついた、レストラン「ヴァン・ダイク」。その趣味は無いが、美青年でも有名だった画家の名前。

確か鴨の料理を食べたはずだったが、味覚は完全に先程の感動に押し込められて、いまだに思い出せない。

余韻を味わうとは、このことだったのでしょうか。
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# by cantare-so | 2005-01-31 11:42 | フレンチ

エスカルゴ

冬のパリ、モンマルトルの丘のはずれ。コートの襟をたてたまま、飛び込んだ、小さなレストラン。店の名前が、有名な歌の一節と同じなので興味を惹かれた。

 ちょっと、背景も何もかも出来すぎの気はしたが・・・・・

寒かったので、とにかく赤ワインと何か温かいものを、お腹に容れたかった。注文して出てきたのは何と、普通の形と違い、可愛いプチ・シューに包まれたエスカルゴ。「ブルゴーニュ産?」と聞くと、にやっと笑って首を振った。

そんな珍しくて、高級な物が出て来るはずはないのに、ワインの酔いのせいで、馬鹿な質問をしてしまった。

中身はソテーしただけの小振りのエスカルゴ。さっぱりしていて品の良い味。

さて、例の歌の一節を口ずさみながら店を出て、マフラーを忘れた事に気がつき、慌てて戻った。それでもとても良い気分だった。
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# by cantare-so | 2005-01-03 11:43 | フレンチ

再度、ドーヴァー・ソール

クリスマス近い冬のパリで、魚介類盛り合わせを前に、白ワイン(シャブリやムルソー)を楽しむのは、いつも心ひかれることです。

しかし特急タリスで食都ブリュッセルまで足をはこび、ベルギービールで口をしめらせて、ドーヴァー・ソール(舌平目)を食べるのは、さらに心が躍ります。

キリスト誕生のクリッペンの飾りつけで、さらに美しさをましたグラン・プラスを横切り、古く風格ある証券取引場の建物をめざし、さて一人で食事をしているマダムの斜め前の席に案内されて、目が合えば勿論最高!

但し、美人であまりおしゃべりでない事を条件にすれば。
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# by cantare-so | 2004-12-13 11:44 | フレンチ

エル・チョクロ

体調不良のため、しばらくお休みしていた美味感懐を再開します。

今年十一月、ペルー・リマ市でのコンサートの後、インカ帝国の遺跡が数多く残る、古都クスコに旅しました。

この旅で楽しみにしていたひとつは、アンデス原産のとうもろこしを口にする事。最近は、東京のペルー料理店でも出されているが、やはり現地の市場でインディオが売っている、「チョクロ」を味わって見たかった。

日本の物より、倍はあろうかと思われる大きな白い粒の、ただ茹でただけで甘くも塩味もしないとうもろこし。

クスコからマチュピチュに向かう、列車の途中駅で手にした一本30円ばかりの「チョクロ」、これこそ噛み締めれば締めるほど美味しくなる、私が探していた味でした。
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# by cantare-so | 2004-12-05 11:45 | エスニック