モラヴィア地方のブルノを通過すると、気分は早やウイーンだ。
最近貴重な存在の食堂車で、ゆっくり昼食を摂る。メニューは2コースあり、客は少ないが、しかしひとりで働く従業員のサービスは、とても良い気分にさせてくれる。 鉄道の旅は本当に楽しい。 南駅の改築工事中で、列車はマイドリンクに到着。タクシー乗り場を捜すのに手間取ったが、ホテルまで15分。運転手は私を日本人と見るや「福島原発は大丈夫か?」「放射能は?」の質問。CNNにしろBBC、そしてヨーロッパ中のTVのトップニュースは日本のことばかり。「日本はストロングだから大丈夫だ!」と最後は励ましてくれる。「ありがとう!」そして「問題ない」を繰り返す私。 しかし、被災に苦しむ日本のことを思いながら、ウィーンは春まさに到来の感。木々は芽吹き、鮮やかに花々は咲き始めている。 明日の楽友協会(ムジーク・フェライン)のウィーン・フィルのチケットは絶対に手に入れよう。 何たって、ウエルザー・メスト指揮のリヒャルト・シュトラウス「アルプス交響曲」だから。 プラハに比べると物価も高く、コンサートの裏ルートも格段の法外さ。それも仕方がないが、何ともリングの中は観光客で溢れている。 数年ぶりのウィーンはやはりこれまた楽しい。 だがオーストリア料理は口に合わない。食事はどうしても行きつけた店の日本食になってしまう。 結論から言うとウィーン・フィルのコンサートは、バーバーやプーランクのオルガン協奏曲、そして「アルプス交響曲」、楽友協会のオルガンも素晴らしかったが、定期会員ばかりかと思っていた会場の雰囲気は、言い方は悪いが「世界中のおのぼりさん」が多いということ。まあ、私もそうかも知れないが。 但しウィーン・フィルは世界一のオーケストラには違いない。 夜更けたケルントナーを歩きながら、ふと、プラハでの地元のお年寄りが足繁く通うコンサートに、真に音楽を楽しむ姿を見たような気がした。 翌日、ウィーンを去る前日だが、トラムに乗りハイリゲンシュタットまで出かけた。いつものようにベートヴェンの小道を歩き遺書の家まで。 麗しの春が来て、鳥啼き花は咲き、気温はぐんぐん上がって汗ばむほどだ。 クレーン車が道を塞ぎ、遺書の家は工事中。 4月はお昼から店開けているマイヤーに入り、中庭のテーブルにつき晴天続きだった今回の旅に感謝と 、そして音楽の歓びに、ワインを満たしたグラスを上げた。 ほろ酔い気分でエロイカガッセを辿り、もと来た道を歩きながら音楽が満ち満ちて聞こえるようだった。
by cantare-so
| 2011-04-12 22:52
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